Vantageの処理はトランザクション ベースです。トランザクション管理の主な目的は、並列性を最適化することです。つまり、できるだけ多くのセッションが、データの一貫性や保全性を犠牲にしないで、データベース内の情報に同時にアクセスできるようにすることです。
データベース トランザクションの定義
- 作業の単位としてのトランザクションは、データベースに対して実行される一連のSQL操作を定義します。それらの操作は、全部実行されるか、まったく実行されないかのいずれかになります。これは、いわゆるトランザクションの原子性プロパティです。
- 回復の単位として、トランザクションは、トランザクションを正常に完了できない場合に、その状態を以前の整合状態に戻すためにデータベースで実行される一連のロールバック操作を定義します。
トランザクションは、作業の単位および回復の単位という一般的な定義のほかに、それによってデータベースがある一貫した状態から別の一貫した状態に移行するので、一貫性の単位でもあります。一連の更新操作の最中に、データベース オブジェクトは新しく一貫性のある状態に変更されるので、一時的に不整合になることがあります。トランザクションは、一時的に不整合状態になる可能性がある中で一貫性を提供するために考案されました。一時的な不整合はすべて、トランザクション内に隔離される場合があり、他のユーザーからは認識されません。つまり、同じデータベース オブジェクトに関連した任意の2つの操作は、いずれかの順序で実行されるようにする必要があるということです。逐次性の定義を参照してください。
Teradata SQLにおける文およびリクエストの定義
Teradata SQLのリクエストと文の定義を理解することは重要です。
- リクエスト レベルAPIオプション
- 0以上のSQL文
- リクエスト関連メタデータ
- リクエスト関連データ
ANSI SQLではリクエストの概念は使用せず、作業の単位を定義しない、SQL文のみを指します。
どのSQL文でも単文リクエストでありえますが、すべてのリクエストがSQL単文とは限りません。
Teradata SQLにおけるトランザクションの定義
Teradata SQLトランザクションの定義は、部分的に、そのトランザクションが実行されるセッション モードに依存します。
Teradataセッション モードでは、トランザクションは暗黙的にも明示的にもなります。ANSIセッション モードでは、ANSIトランザクションしかありません。
暗黙的トランザクションの定義
Teradataセッション モードで実行される各リクエストは、BEGIN TRANSACTION文によって優先されない限り、暗黙的トランザクションです。優先される場合、トランザクションは明示的になります。
Teradataセッション モードでは、暗黙トランザクションは単一のリクエストとみなされるために、最適化ルーチンは、リクエストを解析するときに、そのトランザクション全体 でどのようなロックが必要であるかを判別することができます。処理を開始する前に、最適化ルーチンはテーブルのロックを定められた方法で調整して、デッドロックを最小にすることができます。
ANSIセッション モードには、暗黙的トランザクションがありません。
明示的トランザクションの定義
また、BEGIN TRANSACTION文を使用してTeradataセッション モードでトランザクションを明示的に定義することもできます。
- END TRANSACTION文。
- ABORT文またはROLLBACK文。
- リクエストの失敗応答。
- セッションがログオフされたとき(トランザクションをアボートします)。
- システムが再始動したとき
BEGIN TRANSACTION文とEND TRANSACTION文は、ANSIセッション モードでは実行できません。そうしようとすると、データベースはリクエストをアボートし、要求元にエラーまたは失敗応答を返します。
構文解析プログラムはBEGIN TRANSACTION文を受け取ると、後続のSQL的テキスト内でSQL文のキーワードを直ちに検索します。これは、EXPLAIN、LOCKING、NONTEMPORAL、およびUSINGなどのリクエスト修飾子の配置を決定するときに注意してください。
例えば、明示的なトランザクションの最初のリクエストがUSINGリクエスト修飾子と関連付けられている場合、そのUSINGリクエスト修飾子はBEGIN TRANSACTIONリクエストの後に続くのではなく、このリクエストより先行する必要があります。言い換えると、USINGリクエスト修飾子はBEGIN TRANSACTIONの境界の外に指定する必要があります。
ANSIトランザクションの定義
- COMMIT文。
- ABORT文またはROLLBACK文。
- リクエストの失敗応答。
- セッションがログオフされたとき(トランザクションをアボートします)。
- システムが再始動したとき
COMMITリクエストはTeradataセッション モードでは実行できません。作成しようとすると、データベースはリクエストをアボートして要求元にエラーを返します。
明示トランザクションおよびANSIトランザクション用のロック
数個のリクエストが1つの明示またはANSIトランザクションとして実行依頼されたときは、それらのリクエストは、1つずつ処理されます。このことは、最適化ルーチンがトランザクション全体としてどのロックが必要になるかを判断する手段がないことを意味しています。
- Teradataセッション モードでは、一番外側のEND TRANSACTION文。
- ANSIセッション モードでは、COMMITまたはROLLBACK文の実行依頼
ANSIセッション モードでは、すべてのトランザクションを明示的にコミットまたはロールバックする必要があります。そうしないと、ユーザーがトランザクションをコミットしたり、ロールバックするまで、すべてのトランザクションが継続します。
- システムが再始動したとき
エラーと失敗
以下のテーブルは、システムがトランザクションをロールバックする条件について簡潔に説明しています。
応答コードのタイプ | セッション モード | 実行される処置 |
---|---|---|
エラー | ANSI | エラーを生じるリクエストだけをロールバックします。 ロールバックされるリクエストのために付与されたロックは、解放しません。 |
Teradata | 適用なし。 Teradataセッション モードでは、システムがエラー コードを返しません。その代わりに失敗コードが返されます。 |
|
失敗 | ANSI | エラーを生じるリクエストを含むトランザクション全体をロールバックします。 |
Teradata |
システムはエラー生成リクエストのためにロールバックされたリクエストに設定されているロックを解放しないことに注意してください。そのようなロックはすべて、トランザクションがコミットされるか、ロールバックされるまで有効です。
エラーはANSIセッション モードのトランザクションを完了しませんが、失敗は完了することに注意してください。
トランザクションのACIDプロパティ
- 原子性
- 一貫性
- 独立性
- 耐久性
これらの表現のトランザクション特有の意味について、以下のテーブルで説明します。
用語 | 定義 |
---|---|
原子性 | トランザクションは、発生するかしないかのいずれかです。トランザクションの境界内にSQL操作コンポーネントがいくつ指定されているかに関係なく、それらはすべて正常に完了してコミットするか、あるいはそれらがすべて失敗してロールバックするかのいずれかになります。部分的なトランザクションというものはありません。 必ずしもこのプロパティにANSIトランザクションの意味が当てはまる必要はありません。 |
一貫性 | トランザクションは、ある一貫したデータベース状態を別の一貫したデータベース状態に変換します。データベースが中間的な不整合状態になることはできません。 |
独立性 | あらゆるトランザクションの操作は、そのトランザクションがコミットするまで、他のすべてのトランザクションから隠ぺいされます。実際には、トランザクションがこのプロパティを継承する必要はない場合があります。 分離レベルの定義を参照してください。 |
耐久性 | 一度コミットされると、基になるシステムがクラッシュしても、データベースの新しい一貫した状態は保たれます。 耐久性は、持続性と同義語です。 |
これら4つの要素は互いに独立した概念ではないのみならず、これらの概念の共有程度もそれぞれがかなり異なっていることも明白です。原子性と一貫性とはほとんど互いを巧みに言い直したものであり、そのどちらも独立性がなければ実現しません。
さらに、さまざまなACID保証の重要性は、トランザクションが読取り専用かまたは書込み操作も行なうかに依存します。例えば、読み取り専用トランザクションの場合、原子性および耐久性は無関係ですが、独立性はこれが正しいという理由から非常に重要です。
ANSIセッション モードでは、トランザクション内のリクエストがエラー応答を出して失敗したときにトランザクション全体ではなくそのリクエストだけがロールバックされるので、トランザクションに常に原子性があるとは限らないことに注意してください。トランザクションの残りのリクエストは、それがコミットまたはロールバックするまで続行します。
ロールバック トランザクションへの一時ジャーナルの使用
トランザクションはときどき失敗して直前の状態にロールバックする必要があるため、トランザクションの変更前の行セットを保持するメカニズムが存在する必要があります。トランザクションの変更前行イメージは、一時ジャーナルに保存されます。
何かの理由でトランザクションが失敗した場合、システムは、失敗したトランザクションによってアクセスされた行の変更前コピーを使用して、その更新をロールバックします。これは、適切な一時ジャーナルの変更前行を更新済みの変更後行に上書きすることによって行なわれます。